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泉美木蘭
2015.3.5 07:20

音楽と世界地図


おとといイベントでDJをやった。
バイト先のスタッフ業務の範囲で店のCDをかけることはあっても、
自分の音を持ち込んで正式にDJをするのは初めてだったので、
うまくハマるか、出掛けにいろいろ心配になって、
予定より増やして80枚ちょっとCDを持っていった。
うまく盛り上がって、みなさん踊りまくってくれて、よかった。

私はラテン音楽と、中近東、東欧、バルカン半島の音楽が好きで
日常的に聞いているのだけど、特に民族の移動の激しい地域は、
音楽にもその特徴が出ているので、世界地図で場所を確認しながら
聞くと面白かったりする。
知人のフランス人のDJは、日本に長く住んでいるけど、レコードは
フランスで買ってくるのだと言っていた。
移民がいるので変わった音楽が多いのと、レコードの質が良くて、
安いらしい。

スロバキア、ハンガリー、ルーマニアあたりのジプシーの音楽は、
演歌のような哀愁漂うメロディーに、やたら高速のブラスバンドが
ブッパブッパと入るのが特徴なんだけど、
ジプシーはもともと北インドから流れてきた人達でもあるので、
音のなかにインドの民族楽器が混ざっていたりする。
街角でブッパブッパ演奏して小銭を集めては、怒られて、
いっせいに逃げ去るというパターンが多かったようなので、
楽器もラッパや小さな太鼓など、担いで走れるようなのが多い。

ルーマニアの北部の、地図にも乗っていない村の住民達で
編成されるあるジプシーブラスバンドは、たまたまそこが、
他国のラジオの電波が入る場所で、
そして、その局がたまたま世界の流行曲を流す局だったので、
自分たちで世界中のポップスをアレンジして演奏していた。
映画『007』のテーマソングなど、なじみがあり、聞きやすく、
なおかつ個性の強いブラスバンドなので、ファンが多い。
最初は拾ってきたボッコボコのラッパばかりのバンドだったのに、
昨年、日本へ来たときには、ピカピカの高級ラッパに変わって、
全員が輝く革靴を履いていた。

シリアやレバノン、リビアは、アラブ音楽のイメージが強いけど、
実はテクノやトランスが盛んだったりする。
シリア人アーティストに、シリアの民族音楽(盆踊りみたいなの)を
超高速のテクノにして、クルド語で歌うというおじさんがいる。
テクノはデトロイト発祥の音楽だから、なんだかカオス・・・。
いまどうなっているかわからないけど、このアーティストは、
シリアの大スターらしい。
このシリアン・テクノは、ひどく閉塞感のある、脳内麻薬大爆発で
踊り狂い続けるような感じの音楽で、これが流行る国の若者は、
どんな日常を送っているのか、、、想像をめぐらせる。


泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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